カーテンを引く
tonpekep

粛然として初夏は重なり
カーテンを引く
夏の重さは水面を広げる
わたしたちは口止めをされている
沖の方では服を脱ぐようにして
海の肌が見える
わたしはあなたが好きだっていうことを
莫迦みたいに何度も
貝殻に向かって通信する

谷川俊太郎の詩を読むように
愛を受け入れる含羞が好きかもしれない
体温を夏に投げ出すようにして
わたしらはそれぞれの温度を抱擁する

遠いところがくすぐったいような
わたしの頁が捲られる
あなたの頁が捲られる

名前が蝶々のようにゆらゆらと気流に浮かぶ
昔話を語るようにして
合わせる呼吸が点滅する
静かさの重力は
ときどき上になったり背面になったりする
それから重さは
優しい何事かに転換する


自由詩 カーテンを引く Copyright tonpekep 2006-06-11 17:52:38
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