蝙蝠傘
暗闇れもん
街角で黒い蝙蝠傘の君に出会った
夕闇に隠れてこちらから顔は見えないけれど
黒い傘からちらちらと映える赤い紅の色が卑猥で
どうしようもなく赤面してしまったことを覚えている
こんな記憶に必死にしがみついている俺って笑えるだろと
貴方は笑うのだろうけれど
私は何だか昔の自分に負けてしまった気がして
唇を噛み締めたまま
うつむく事しかできなくて
何故あの時、雨も降っていないのに黒い蝙蝠傘で歩いていたのかなんて
貴方は聞かないから
私はここにこうしているのよ
なんて言えないわね
過去に縛られて
吸う空気さえ面倒になってきているのかしら
私は何度も咳き込み遠くなった意識で
貴方は私の向こうの誰を愛してきたのとそっと繰り返した
返ってきた言葉は確かに愛の言葉
けれどそこに私は居ないの
泣きながら子供のような私
笑顔と優しさの奥で貴方の苛立ちが見える
私は何処かで大人になるための何かを忘れてきたの
ずっと変わらない私を果たして貴方、愛してくださる?
愛して、愛してとまるで貴方を縛る呪文のように
私があの時、蝙蝠傘でいたのは
貴方を今こうして苦しめるためではないのに