書けない理由(mixiより転載)
佐々宝砂

昨日チャットしながら書けない理由について考えていた。書けない理由は明白だ。書くと誰かを傷つける気がして怖くて、それで書けないんである。しかし何を書いても誰かを傷つける恐れは常にあり、単なる冗談書いてもそれを真に受けて(無関係なのに)傷つく人はいるわけで、そんなこと気にしてたらきりがない。

誰かを傷つけずに書くのは、すべてのイキモノを殺さずに生きるのが不可能なのと同じくらいに不可能なことなんである。ほんまに言葉で傷つけるのがイヤなら、私は沈黙の行をやらなきゃならぬ。そしてそれもやっぱり無理なのだ。私に黙れっていうのは、私にモノ食うなってのと同じくらい無理。

ってことは、私は常に誰かを傷つけるという事実(絶対的事実)を自分で受け入れ、納得するほかない。という結論をKさんに言ったら、工学的な発想だと言われた。どこが工学的なのかわからんが、一応自分でも合理的な発想だとは思う。

私は葛藤や悩みが苦手で、どうしたって合理的な理屈や解決法を見いだしたがる。うじうじするのは好かない。だがこの件に関してはかなり長いあいだうじうじしているなあ。(それしかないであろう)結論は出ているのだが、まだ納得していないんだろう。

人を傷つけることがいいことだとは思わない。しかし「そんな程度のことで傷つくなよバカヤロー」と思うことはある。困ったことに、繊細で傷つきやすい人とゆーのはどこにもいつでもたくさんいるのだ。そしてたいていの場合、その人に罪はない。傷つきやすいことそれ自体は罪じゃあるまい。配慮が足りない私のほーに罪があるよーな気がする。よって私はまた書けなくなってしまい、しかしいかに配慮しようとも傷つけないでいるのは無理だよなとハッと気づき、話はぐるぐると堂々めぐり。

私は良き人になりたいのであろーか。今回に限り素直に書くが、私は良き人でありたい。いい人と思われたいわけではないので、勘違いしないよーに。私は自分でかくあれと願うほどにはいい人じゃないので、いい人と思われたら、罪の意識でさらに書けなくなります。比較対象の問題じゃなくて、他人の評価基準によるものでもなくて、私の中にある絶対的基準において、良き人になりたいわけなのだ。あなたの基準じゃありませんよー。意味わかりますか。人にどー思われよーとも、本人が納得できてりゃいいの。で、恥ずかしいので、良き人に関する話はこれでオシマイ。

どうあがいても罪を背負ってるってことを納得するほかないな。じゃあ贖罪か? どうやってあがなうか? そのへんを納得できたらなんとかなるかもしれんが、ハードだなあ。きっと。めっちゃハードな道じゃん。私、いい加減ででたらめでてきとーにだらだら怠けてるのが好きなんだよ。ほんとに。

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イキモノを殺さずには生きられないので、私は環境保護の活動をやってる。きっと自分で自分の罪の意識をごまかすためだ。世界標準からいうと裕福な国で楽に暮らしてるのを自覚してるので、私はフォスタープランとユニセフに少額を寄付している。それもやっぱり自分をごまかすためだ。私がいい人なのでやってるわけではない。私のよーなモラル感覚でたらめな人間が生きてられるのは日本が戦争してないおかげだと思うので、かつては平和活動もやっていた(やめたのは無意味な上に逆効果な気がしてきたからである)。

さて、私は「書く」ことに関する罪の意識をごまかすために何をするべきか。以前は批評(というより作者がほしがってると予測されるコメント)を書くことでごまかしてきたが、もう続けられないし、なんか間違ってるという気がしてきた。もうちょっと考えないといけないな。

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モラル感覚でたらめじゃないでしょ、謙遜でしょ、と思われそうなので、つけくわえ。

私は基本的にポリガミーだ。一夫一妻主義じゃない、浮気を浮気だと思わない、つーかかなりたくさんの人が好きで、好きなうえにお互いの同意がありゃセックスもする。同性愛はもちろんOKで国家は彼らの結婚を承認すべきだと思う。お互いの同意があって健康に問題がないのであれば、どういうセックスだって禁止すべきだと思わない。現実にやるのでなければ、血みどろ残虐ロリコンその他もろもろのものすごくひどい犯罪行為について描写してもいいと思う。汚い言葉・残虐映像・エロ画像・いわゆる公序良俗に反するなんやかやを芸術作品などに使用するのは当たり前にOKだ。肉体の改変は、本人が強く希望するのであればなんだってやっていいだろう(後で本人が後悔してもそんなこと私は知らん)。宗教や思想についてはみなさまお好きにどーぞと思っているが、人に押しつけるのはやめてほしい。まして国家単位で押しつけるのは絶対にやめてもらいたい。私には愛国心なんかない。「私って日本人だなあ」と私が自覚するのは、私がまともに使える言語は日本語だけなのだと自覚するときのみである(つまり私が忠誠を誓うのは、日本国ではなく日本語に対してだ)。国家なんか信頼おけるかと思っているので、死刑に反対している(死刑が非人道的と思うから反対しているのではない)。

ほかにもあるかな、ありそうだが飽きたのでこのへんでおわり。

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血みどろでエロくてでたらめで無責任で、でも明るくて読後感のいいものが書けたらいいな、ラファティの最高の短編みたいなの。そういうのできたら最高だな。がんばろう。

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私は書くよ。私の執着は、書くことと読むことと知識欲に対してしかないもん。

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ものすごく重要なことを、意図的にかもしれないが書かないでいたな、私。

私が誰かや何かを傷つけたくないのは、傷つけたということを私が自覚することによって私自身が傷つくことを恐れるからだ(これを最初に指摘してくれたのは田代深子さん。ありがとう、感謝している)。つまり私は、とてつもなーくエゴイスティックな理由により「傷つけたくない」とほざいているのだ。


2006年06月07日
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散文(批評随筆小説等) 書けない理由(mixiより転載) Copyright 佐々宝砂 2006-06-10 18:54:27
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