カラス
壺内モモ子

道にカラスの羽が落ちていた
とても丈夫な羽で
とても美しい黒だった
懐かしい匂いがしたので
部屋に飾ろうと思い
拾ってかえることにした

なあカラスよ
イソップ物語の『おしゃれなカラス』でお前は
川べりに落ちていた他の鳥の羽根を体に飾るが
その黒い体がそんなに嫌いか
他の鳥たちは、その艶やかで美しい黒を
羨ましがっているのだぞ

なあカラスよ
今思い出した
お前のその黒は
いつか私が愛した人の髪の色
いつか私が愛した人と見た
夏の夜の空の色
私が今、見ている景色は
こどもの頃の帰り道
夕焼け空に
ガアガアとカラスが鳴いている

なあカラスよ、カラス
お前は本当に不吉な鳥か
私に幸せを運んできてくれないか


自由詩 カラス Copyright 壺内モモ子 2006-06-10 02:49:12
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