秘密
佐々宝砂
いまはまだ
冬の秘密を伏せておこう
ねっとり黄金の蜂蜜を練りこんで
ぴかぴかの春がやってくる
舌先で感じる原初の味覚は
甘味なのだから
わたしは拒まない
とろりながれる黄金の蜂蜜の
わずかな酸味が
舌を刺すとしても
消える夢ではない
はかなく溶ける幻ではない
もっとずっと
強固な
先端に感じる
この確かな甘味を
甘ったるいと切り捨てるなら
あなたは愚かだ
春がくる
ぴかぴかの春がくる
新しい春がくる
春を拒むな
春はいつだって甘いのだ
が
いまはまだ
夏の秘密も伏せておこう
自由詩
秘密
Copyright
佐々宝砂
2004-02-21 03:11:34