影杖
砂木


さちからウマレタト笑みが言ったか

ぬかるみにゴミつけたままのゴムで縛った水鞠が
息の年老いたぬるい尾ひれで浮かんでいる

縮こまるよりだるい薄さだ
ついたてのはじまりは気管支の中の蒸留

吹き零れて晒して恥じ入るなんてじゃれるなよ
寝ずの沙汰だからしがらみとも呼んでもやるが

気の折れる肌あいにだけさらけ出せる
飴色の北斗だけ星をみいだせる

笑みから生まれたと幸が言ったか
拳の中かじりつけよ拳だけ自由だ


   この詩を もうひとつの言葉で


幸せだから笑うんじゃない
笑って はね返す

ぬるい涙の中
ゴミのついたゴムに縛られてたって

薄っぺらの勘違いだ
もっと澄んだ ついたてがあるだろう

自分がふきこぼれたって
恥だなんて愛想笑いして逃げるなよ
宿命だとぐらい 思いもするが

つっぱり棒が折れて 見えた
やさしい味だけ 夜空を甘くみせる

拳は弱くて だめかもしれない
けど握る心は 心の拳は
何度でも くりだせる

幸から産まれたと笑みが言ったか
涙の中 燃える命の歓喜よ


自由詩 影杖 Copyright 砂木 2006-06-08 22:25:03
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