すがた こだま
木立 悟




満ちていたものは見えなくなり
いたのかどうかさえわからない
かたちはかたちを保てぬほどに
すばやく色も無くすぎてゆく


影のなかに潜む影から
うつろな虹がさまよい出でて
月を緑に響かせながら
無言の道を歩みだす


拙くやさしい水に洗われ
目はくりかえし新しくなる
あたたかい手が輪をつくり
眠り目覚め 眠り目覚める


人の地から来て
水の地へと去る
遠いうつろに到くもの
蒼い光に耳すますもの


雨の姿の鳥たちが
午後の雨をすぎてゆく
かえるこだま かえらぬこだま
濡れた手のひらに唱いつづける










自由詩 すがた こだま Copyright 木立 悟 2006-06-08 13:45:45
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