抽象的な愛

 その空間には慈悲深い静寂と
 時間が意思を持って寝息を立てた
 喉を鳴らす鳩の存在を確認する限り
 現在は早朝だろう
 運命だよと
 そう寝言を囁いたのは時間で
 ぼくはさながら飢えた草木のように
 必死で根を場所につき立てた
 それはそれは奥ふかく
 それはそれはじんわりと肌を湿らせた
 青空の梺には世界の果てがあり
 そちらへノアは向かったのだと思う
 きっと死にたかったのだと
 そう考えている
 もう意思を持たない静寂と時間が
 自動車の音に連れ去られた


自由詩 抽象的な愛 Copyright  2006-06-08 07:03:47
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