思考停止。
葛西佑也

夏の気配と湿気とが
充満するこの部屋で、
私は思う
六月は麻痺している、と。
ベッドの上で横になっていると、
爪先や指先や腹筋、
恥骨までもが渇いた息吹に
やられてしまう。
どうしようもなく痺れている。

私にははっきりと
伝えたいことがあるのに、
声を発しようとすると、
横隔膜が邪魔をする。
もたもたしていると、
迫り来る水気が
すべてを流し去ってしまう
一刻の猶予もない
なのになのに、
私の下腹部では
大洪水の前の静けさが。

東から日が昇る頃、
私は西を向いて大きく息を吸い
西へ日が沈む頃、
私は東を向いて大きくため息をつく。
一日とはそういうものだ。
私の伝えたいことは、
水平線のはるか遠くにまで
遠ざかってしまう。

お腹の中では、
それはずっとずっと
奥深くに
押し込められて
圧迫されて
二酸化炭素に変えられてしまう。
私には光合成なんてできないのに。

雨が降れば
私は憂鬱になる
待ち望んでいたものを、
あっさりと手放して
しまいそうだ。
私はすべてを六月のせいにて
私は思う
六月は麻痺している、と。


自由詩 思考停止。 Copyright 葛西佑也 2006-06-07 23:15:05
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