KUKUA(くくあ)
水在らあらあ

ブナ林を歩いていた
二人で 
おれは少し茸や山菜をさがしながら
おまえはきれいな花や苔に触れながら
ブナ林を歩いていた


木漏れ日が、いいな。
そうおれが言うと
おまえは、そこここでくるくる踊ってみせる
それでなんだかおれも
口笛とかを
吹いてみたりする


おまえはいろんな小さな花や
おかしな形の植物を根っこから
家に持って帰ろうとするから
まあ世話するおれの身にもなってみろと
おれはその中のいくつかしか
かばんには入れない


おれは時々水筒のワインを飲む
おまえは時々水を飲む
そして二人は木漏れ日を受け
なにかやさしいものを
光合する
おまえはくるくる舞って
おれは口笛を吹く


おなかすいちった。
おまえが言う
ああ、そうだな
あの切り株で
お昼にしようか


お弁当は握り飯
おまえのすきな
ごま塩で包んだのが二つ
おれの好きな
ゆかりで包んだのが三つ
どっっちも中身は
つなマヨネーズだが


いただきます
めしあがれ

あれ



ほら

きこえる


(クークー)


ほら、くくあ。
ああ、そうだな。


くーくー。
おまえが呼ぶ

(クークー)

えへへ。返事した。


かっこー。
おれが呼ぶ

・・・

なにそれ。
いや、かっこー。
かっこー。

・・・

ちぇっ。


また歩き出す
二人
ブナ林の中を
おまえはスキップしながら
おれはその後ろを
すこし遅れて


スキップのたびにおまえのポケットの
いくらかの小銭が
音を立てる
おれも自分のポケットを少したたいて
音を立ててみる


おまえが歌う

今年はこれでお金持ち
だってくくあが歌ってる
私のポケット鳴っている
今年はこれでお金持ち
チリリピン
チリリピン
チリリチリリピン

なにその歌。
作ったの。今。いいでしょ。
ああ、まあ。
二番聞きたい?
ああ、歌いなよ。

くくあが歌うと財布が太る
でぶでぶでーぶ
くくあが歌わなくてもあんたは太る
でぶでぶでーぶ
チリリチリリピン

どう?
二番、それ?
うん。三番、聞く?
いや、いい。

・・・

なによ!
うわっ、なんだよ!
でへへへ。えへえへへへ。
やられたな。森に。
でひひひ。ひーひー。きゃー!
わっ。


おれはぐんぐん走る
おまえの奇声に追い立てられ
体に動物的な元気が満ちて
おれはぐんぐん走る
みどりが
茶が
木漏れ日が
点在する白や黄や
赤が
流れ
とけ
それが少し怖くなったとたんに


つまずいて


ああおまえが
ああおまえが来る
自然そのもののように
おおらかに気がふれた
おまえが



くーくーいいながら





























注・KUKUAはカッコー。バスク地方には、カッコーが鳴くときにポケットにお金が入っていると、その年はお金が儲かるという迷信があります。


自由詩 KUKUA(くくあ) Copyright 水在らあらあ 2006-06-05 18:25:35
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