まほろば
朽木 裕

断片で世界は出来ている。君と僕もそうさ。
夢の中で君の声を聞いた気がしたんだ。
白い夢だよ。さらさら淋しい風景の白い夢だよ。
君は僕に手を差し伸べて云ったんだ。

「私は貴方を救えるかしら?」

おかしいだろう?こんなにも白い狂気の中で
唯一の救いみたいに手を差し伸べておいて
救えるかしら?だなんて。

君は逆光の中で目を細めてた。
太陽は君の後ろだよ。だから眩しくなんてない。
なにを見ていたの?どうして そんな、泣きそうな目で。

「私は」「貴方を」「救えるかしら?」

記憶は白く消えていく。
夢に聴力はどう作用するの?
あれは本当に君の声だったの?
泣かないで、下さい。お願いだよ。

(私は貴方を救えるかしら?)

白い狂気。さらさら風に消えていく。
きっと。きっとね。
本当に救われたいのは君、だったんだ。


自由詩 まほろば Copyright 朽木 裕 2006-06-05 00:07:16
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