お ん な
葛西佑也
*
いつまでも、
溶けそうにない
って、 思えてくるの。
この雪の 白い場所で
あなたは ぼくを。
大きな瞳の奥には、
雪の風景、と
ぼくたちが、
マッチングせずに。
まるで、古臭い
邦画だね。
雪の国の記憶に、
比べてしま ったら
あなた も
ぼく も
大きくなってしまった。
それでも、
「今が一番いいのよ」 と
あなたの大きな目が言ってる。
いつまでも、
その目を失わないで、
見ていて ぼくたちを。
雪の日は 過去の記憶なの。
それさえも、
埋もれて い、く。
*
男は、アルコールという
お薬で、ときどきイカレテ
しまうんだ ね。
そんなとき、あなたは
きびしいこえ で、男を制すの
そんなことが、あった夜
あなたはいつも泣いていたんだ ね
それは、こそこそと 行われるの。
まるで、雪の日の儀式みたいに。
なにがかなしいの?って
聞きたくても 聞けなかった ぼく。
そのよるは、 押し殺すような泣き声が、
響いていたの。
*
あなたが好きな、
香水。を母の日に
おくろうとして
ぼくは、とおくのまちへ
でかけた。
まだ、少年の、 小さな足で。
道に迷ってしまって、
辺りは暗くなっていたの。
ぼくは、こうすい こうすい・・・
って なんどもいいながら、
おまわりさんに尋ねたんだよ
おちゃの おちゃの ・・・
「おちゃの においの こうすいは
どこ?」
って
そしたら、なぜだか
ちょっとして、あなたが現れて
手をつないで一緒に帰ったの
あのとき、ぼくは気が付いた 。
こうすいはあなたの臭いじゃ
ないんだ、って。
*