飲んでしまった日から、後悔して。
夕凪ここあ

目が覚めれば
病院と呼ばれる場所に寝ていて
(それでも私は他の人と話すことも許されない部屋の中で)
一番初めに想ったことといえば
あなたに電話しなきゃ
ということで、それはもう叶わない部屋の中にいる私。

鉄格子に阻まれて、泣いて、喚き散らして
白衣を着た人たちが 私に注射をしていきました。

薬のせいで、頭が朦朧とする、
あぁ、まだ自分がどこにいるかさえわからない
点滴に繋がれて食事もしないままどれほどの時間がなくなったかわからない

ひとりきりの暗い部屋で、泣いたって誰も来やしない
そのうち意識がはっきりし始め
先生や周りの人に、ちゃんと挨拶もしましたし、いい子でいました。

決して開かなかった鍵が開けられ
一般病棟に移された私は、先ずあなたに電話をしました。
仲直りが出来るはずだった会話は
あなたからの別れの言葉で終わってしまった。

もうそれから何があったかなんてわからないくらいに、しばらくして
一度だけお見舞いに来てくれたあなたに会うのが待ち遠しくて、少しこわかった
冗談のつもりで聞いた会話に
彼女はできたと 答えられてしまってから、

息がつまりそうで、
それでも生きていかなきゃならないことが辛かった

毎晩、廊下に一列に並んで睡眠薬を飲まされた
どうしようもない眠気に横になっても夜中
あなたと知らない誰かの夢で目が覚めて泣いてしまう

大丈夫、と声をかけてくれる
隣のベッドの人もきっと何か辛いことを抱えてる人だった


ぼんやりとした頭のまま
最初の電話で約束した 変わるから という言葉を
心で繰り返して生きてきた

何週間が過ぎた頃、無理をして笑顔を作っていた頃
先生、もう大丈夫ですから。
と、きっと嘘ではなかったし、
少しの嘘もきっとあったけれども、病院を後にした。


どんなことがあったって生きていけることを知った私。
少しの嘘をつくことを学んだ私。
それでも心に嘘をつき続けることは出来ないと知った私。
あなたに全てを話すことが出来た私。
そして、あなたの一番そばにいられる、私。

もう呼吸がうまく出来なくなることなんてないし、
線路で立ち止まったりなんかしないし、

家に置いてある薬だってちゃんと分量通りに飲める、私。


自由詩 飲んでしまった日から、後悔して。 Copyright 夕凪ここあ 2006-06-01 19:39:59
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