海の魔女
暗闇れもん

相手が自分を好きかなんてどうしたら分かるのでしょう

人魚姫に足と運命をあげ
引き換えに声を奪ったあくどい魔女の子孫に聞いてみても
私の歌う声は飛ぶ鳥さえも落としてしまうので
結構よと言われてしまいました

魔女が留守のときにそっと忍び込み
髑髏が入った年代物の木の机の引き出しに
すみれ色の手帳を見つけました

それは恋をしたものにしか開かない魔法と
魔女の涙で出来ているようでした

触れることさえ戸惑うくらいの
お菓子の家にもなかった甘く苦しい恋のお話

白雪姫の母からもらった林檎を齧り
海で魔女がまだ
年頃の乙女だった頃

恋をしました

身分違いの恋で
話しかけることさえ出来ないまま
年月は流れ
毎日変わらない思いを秘めたまま
そっとまとわりつく泡にまで嫉妬するくらいに

叶わなかった魔女のすみれ色の恋

身分違いの恋を叶える為に作られた魔法の薬

人魚姫に渡した後
魔女は日記を撫で
余った薬を飲み干し
海の泡となったのです







自由詩 海の魔女 Copyright 暗闇れもん 2006-05-27 09:22:33
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
街の魔女より