鰯雲
暗闇れもん

叫んでいるよ獣のように

神を呪い、地に唾を吐く女が
両手を広げ、空に向かって悪態をつく

何故、わたくしではないのですか

女の声が空高く僕の元へと届く時には
もう既に人ではない別の生き物だろう

僕が殺めたカブト虫か、はたまた僕が殺めた我が子のように

痛み苦しかったかい

ごめんよ、ごめん

終わることの無い炎の中で僕は焼かれ続ける

泣きはしないよ

生まれることさえ叶わなかった我が子を思えば
おぎゃあと泣くことを許さなかった我が罪を思えば

熱き炎に焼かれ、僕はどうやら鰯になるらしい

泣きはしないよ

誰かの胃に入るそんな一生で十分、神は僕を救って下さっている

それに

鰯となった今ではもう

誰かが僕に針を刺し、切り、焼き、皿に盛り、たいらげる

そんな見知らぬ誰かを幸せにしたい


自由詩 鰯雲 Copyright 暗闇れもん 2004-02-18 00:40:38
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