なにもない
山崎 風雅

 この空間を
 時間が静かな音をたてて
 崩れていく

 なにもない 
 
 なにもない

 僕は身体が空になり
 想念だけの存在になる

 ただ想うのは
 月を追いかけることだけ
 追いかけても追いかけても
 月には届かない

 緑がその勢力を伸ばしている
 部屋の中まで忍び込んでくる

 大切な思い出
 悲しい出来事

 なにもない

 なにもない

 ここからが出発だ

 月明かりが窓の外から
 僕のことを覗き込んでいる

 だからって

 なにもない

 なにもない

 音がない

 色がない

 香りがない

 光りがない

 あるのは

 僕の想いだけ





自由詩 なにもない Copyright 山崎 風雅 2006-05-26 02:35:49
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