貝ひろい
ベンジャミン


君が綺麗な貝殻が欲しいというので
もう夕暮れだというのに海へ
そう人工海岸だったけれど
すっかり自然が染み込んで
目を凝らせば小さな小さな生き物もいる
クラゲもゼラチンの肌で打ち上げられ
ヤドカリが潮溜まりに歩いている
そうそう綺麗な貝殻だったね
探そう 綺麗な貝殻
波打ち際へ行こう
白が金色に見える夕暮れだよ
あらゆるものが朱に染まっている
ほら 君の足元にあるじゃないか
綺麗な貝殻が
そっとひろってごらん
水平線の反射が眩しいけれど
君の白い手のひらには
まるで金の粒のような貝殻がいる
君は満面の笑顔でそれを見せて
だけどいけない
その貝はまだ貝殻でないよ
それは生きているじゃないか
残念だね
だけどやっぱり君は満面の笑顔で
そうだね 還してあげよう
それが自然というものだから
僕らがそうであるように
あるべきものはあるべき処へ
そうだね 還してあげよう

ほら もう日も終わる
僕らも手をつないで帰ろう



波音が呼びとめるけれど
あるべきものはあるべき処へ


ヤドカリが小さな爪を振っている
また来よう

そのとき綺麗な貝殻が
見つかればいいから






自由詩 貝ひろい Copyright ベンジャミン 2006-05-24 11:24:03
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