手につかず
加藤泰清

手につかず




風がそよぐ木陰の中を
散歩途中
ドブに足がはまる(なぜここにドブが)
(手でアリを潰した/そうしようと思ったわけではなくて)
そっと足を引き抜くと
膝は真っ赤に割れていた
こんなに歪んだ視界ではぼくは
なんにも手につかず
涙を流す が今ぼくがすべき
全て


頭のてっぺんの
つむじが気になって
なんにも手につかず

(はじめてのカラーリング)

しっぽり濡れた
女性のくせっ毛が気になって
なんにも手につかず

(雨の日のバス停)

はじめてのRPGで
魔王と勇者の勇姿をみて
なんにも手につかず

(一時間の死闘)


これはサプライズだ
狂人と成人の境目を見極められない阿呆は
そこにピアノ線よりも鋭い
(例えるなら彼女/に仕立てあげてみたストーカー/の<アイビーム>)
糸が張り巡っている事態を教わらない
そう危機管理シミュレーション能力ゼロだ
彼奴等なんて生物は屑だ
紛争地域に送り込め! テランドール玉砕措置!
サ-B区化したフライパン都市の真上に
卵を落とすんだ! 目玉焼きだ! 目玉だ!
シリアスライン上に位置する(共鳴反射式)兵士たちに
罪の意識は皆無だという
そうだろう防護服は彼奴等を護っている
あとは裸で充分だ!
その手に持った銃を捨てろ!
必要なのはそんながらくたではない
三重の形相をその眼でしっかりと見定めろ!
愚かさを! 引き剥がした床の下に張り付いた呪いの札に包みこめ!
解き放て!


鬼ごっこすれば
あの子のスカートの中身が気になり
なんにも手につかず

(はやてなんて目じゃないスピードで)

グラスコートを疾走する


自由詩 手につかず Copyright 加藤泰清 2006-05-21 22:49:22
notebook Home 戻る