うたとしずく
木立 悟





夜と衣をまちがえて
午後の星を踏みしいた
小さなしずくは列を知らない
うたはいつもひとりに生まれた


指の色が溶けてはあふれ
紙の道を分けてゆく
紙の色は不義の色
白の足跡 白の声
指が道に描くうた


曲がりやすいしずくが集まり
ふるえながら
視線を泳がせながら
少しずつ少しずつ離れている
へだたりは曇にかがやいて
朝と雨を呼びつづけている


銀は真昼の光に遠く
緑を経ては金になり
ななめうしろのななめうえから
頬ずりのようにはじまってゆく


分かれゆく道のひとつひとつに
まちがえられた赤子はうたい
思い出の無い心に晴れわたり
届かぬまたたきをくりかえしている


分けることのできない空と花
分けるもののない地と花が
ひとつの悲しい手のなかにある
指を 道を 鳥を 火を
巡りながら 溶けながら
ふたたびひとつに色づきながら
しずくはうたをうたいつづける













自由詩 うたとしずく Copyright 木立 悟 2006-05-20 15:35:16
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