駅・鶴橋
たりぽん(大理 奔)

一人で行った交通科学館からの帰り道
環状線で小学生の僕は
財布を落とした

鶴橋駅の連絡改札は
近鉄線の切符が必要で
連絡切符を買っていなかった僕は
家に帰れない

途方に暮れる僕に
駅員さんは20円貸してくれて
公衆電話の向こうの母に
泣きながら助けを求めた
母はやさしくそのまま待てと言う

迎えに現れたのは父だった
だまって改札越しに
200円を渡してくれる
駅員さんに20円返すと
切符を買って改札を抜け
近鉄線のホームに降りる

僕は泣かなかった
父が手渡してくれた
ヤマザキのクリームパンは
しょっぱかったけど


準急の中で
交通科学館で見た
鉄道パノラマを
自慢げに父に
話して聞かせて
その夜は
夕食のカレーライスに
なぜか、いつもはのらない
ミンチカツがのっていた



自由詩 駅・鶴橋 Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-05-18 00:09:57
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