夜(雨と火)
木立 悟
誰もいない町が燃え
闇は闇のまま焼けのこる
このうえもないものから手渡された
かけがえのないものさえ消えてゆく
風はまやかしの花
やるせなく つめたく
咲きひらく
炭のにおいに
小さな
邪
(
よこしま
)
の実が揺れる
ふしあわせにからみつく弱さ
空の熱から降りくるいのち
腕を手を指を
すりぬけてゆく
雨のなかくすぶりつづける
枯れ花と廃屋の煙が
まわりながら
螺旋を描きながら
ほどけてゆく
文字と言葉のように
泣きながら
己を響かせるものを求めながら
自由詩
夜(雨と火)
Copyright
木立 悟
2006-05-16 13:51:16