黒猫
暗闇れもん

ねぇ、愛されるってどんな感じと
黒髪のあなたはそう呟いた

歳が離れていること
黒髪を短く切りそろえていること
黒猫があなたに懐いていたこと
年老いた両親と共に荒れ果てたゴミ屋敷に住んでいたこと
それ以外は何も分からない
わたしの友だった

それがあまりにも昔のことで
あまりにも非現実で
当時あなた以外に友のいなかったわたしの
悲しい幻でしかないのかもしれないけれど

幻で無いという理由が
今でも思い出せるあなたの言葉と
風になびく黒髪のあなたが
わたしがこの世で初めて美しいと感じたことにあるのです

わたしはヘテロセクシャルで
愛する人も異性ですが

時折、黒猫を見ると
短く切りそろえられた黒髪を見ると

あのころ
突然いなくなったあなたの家の前で流した涙は
友のいなくなった悲しみだけだったのだろうかと考えるのです

気づけばあなたと同じ黒を愛し
短い黒髪にして
あなたになろうとしていました

黒猫を残して去ったあなた
あの猫もあなたに恋していたように
あなたのいなくなったすぐ後に
車につぶれ死んでいました


自由詩 黒猫 Copyright 暗闇れもん 2006-05-14 22:52:11
notebook Home 戻る  過去 未来