湿った夜の回折格子
たりぽん(大理 奔)

失ってしまったと
知らせに突かれて
霧雨の中へ飛び出したから
取り込み損ねた洗濯物のように
さびしく湿ってしまった

    時計は無慈悲に
    時を奪っていく装置
    刻んで、刻んで
    もう、そんな瞬間は

さして高くもない山が
苔生した岩のごとく湿って
つめたい吐息を
ながしていく、奪われながら

    暗闇に生まれ置かれたとき
    間違いなく僕らは
    光より先に有った
    有るが故に、奪われながら

すすきに絡む星座を見ながら
自然のはかない命や繋がりについて
夜明けまで語り明かしたのに
人間だけは違うと思い上がっていたんだね

    何もかも、瞳や手のひらまで
    湿気を帯びたまま、携帯を北の空に
    乱反射させる偏光
    なんという屈折率

遙か彼方で立ち上っていく煙
それまで私から奪って
二度と着表されない
アラビア数字の言葉遊び




    
  
殉職した後輩 MOに
   2005-06-05 自由詩投稿「着メロのつづき 」改訂






自由詩 湿った夜の回折格子 Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-05-13 12:07:01
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