おっぱい
大覚アキラ

すがりついて
大声で泣きわめきたい

背中にはいつも
透明な切っ先が突きつけられていて
ほんの少し
力を加えれば
何の抵抗もなくそれは飲みこまれてゆく

じぶんが望んだから
こうなったのに
誰かのせいにしたくて
いつも
あたりをうかがっている

でも
ほんとうは

すがりついて
大声で泣きわめきたい

子どもみたいに
なりふりかまわず
朝まで
おまえの胸を
独り占めしていたい

なにも怖くない

なにも怖くない

そう言い聞かせながら

森の奥に
ひとりぼっちで
歩いていって
誰も知らない場所で
きれいな緑の葉っぱを
丁寧に摘み取って
それで
地面に
おまえの輪郭を描いた

でも
おまえの
胸のあたりのかたちが
よく思い出せなかったから
帰ってきたんだ

なんてこった
くそったれ
ひとりでは
上手く泣くことさえ
できないよ

まったく
なんてこった
くそったれ

ほしい
ほしいから
ぜんぶ
ください

すがりつかせてください
大声で泣きわめかせてください

そんなことが
あたりまえのように
許される
場所がほしい

そんなことが
あたりまえのように
許される
場所であってほしい

何も怖くない

何も怖くない

お願いだ
すこしだけ
このままで
いさせてくれ


自由詩 おっぱい Copyright 大覚アキラ 2006-05-10 16:25:05
notebook Home 戻る