午前三時の印象
安部行人
午前三時、音楽は鳴り止み――
無人の街が点滅している
冷えた空気、星も隠れ――
乾いたタイヤの音が通り過ぎる
絶えず掘り返され埋め立てられる交差点で
電光掲示板がリズムを刻んでいる
入れ替わる時を数えながら
まるで心臓のような正確さで
信号から信号まで続くショウウィンドウで
マネキンが通りを見下ろしている
ガラスの向こうの空間に
まるでもうひとつ街があるように
夜と朝のあいだ、名前のない時――
影のない人間が揺らめく
アルコール、どこかで聴いた声――
それは幻、けれど知っている
ひび割れた鏡の隙間から出てきたような
夜の終わりに飛び去る鳥のような
凍りついた黒いシロップのような
おれの左眼に映る幻の女だ
午前三時、音楽が聴こえる――
蒸発した夢と
近づく朝の予感のあいだ、
午前三時の印象