午前三時の印象
安部行人

午前三時、音楽は鳴り止み――
無人の街が点滅している


冷えた空気、星も隠れ――
乾いたタイヤの音が通り過ぎる


絶えず掘り返され埋め立てられる交差点で
電光掲示板がリズムを刻んでいる
入れ替わる時を数えながら
まるで心臓のような正確さで


信号から信号まで続くショウウィンドウで
マネキンが通りを見下ろしている
ガラスの向こうの空間に
まるでもうひとつ街があるように


夜と朝のあいだ、名前のない時――
影のない人間が揺らめく


アルコール、どこかで聴いた声――
それは幻、けれど知っている


ひび割れた鏡の隙間から出てきたような
夜の終わりに飛び去る鳥のような
凍りついた黒いシロップのような
おれの左眼に映る幻の女だ


午前三時、音楽が聴こえる――
蒸発した夢と
近づく朝の予感のあいだ、
午前三時の印象


自由詩 午前三時の印象 Copyright 安部行人 2006-05-09 00:36:34
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