その男は
山崎 風雅

 その男は
 昼過ぎまで寝ている
 仕事はしていない
 
 その男は
 病気を患っている
 統合失調症だ

 その男は
 一見普通に見える
 病人には見えない

 その男は
 仕事をしていない
 何をしても続かない

 その男は
 よくタバコを吸う
 一日3箱だ

 その男は
 ギャンブルが嫌いだ
 やっても負けるのが分かっているから

 その男は
 友達が多い
 人当たりがいい

 その男は
 ワンルームマンションに住んでいる
 猫を2匹飼っている

 その男は
 銭湯が大好きだ
 3日に1回は通っている
 
 その男は
 4人兄弟の長男だ
 家族はもう呆れて連絡もない

 その男は
 一応彼女がいる
 結婚話になっているが詰めがよくない

 その男は
 昔は本を殴り読みしていた
 SF小説がお気に入りだった

 その男は
 今はあまり賢くない
 本に詩集が大嫌いだ

 その男は
 それでも詩を書く
 落書きの延長だ

 その男は
 祭りが好きだ
 祭りがあると心が踊る
 
 その男は
 古都に住んでいる
 歴史を感じ生活してる

 その男は
 あまり病気の事を詩の題材にしない
 気分がよくないから

 その男は
 子供から好かれる
 おっさんと言われて微笑んでる

 その男は
 昔は悪だった
 無心なんて当たり前だった

 その男は
 アメリカに3ヶ月ホームステイしたことがある
 英語は少し分かる

 その男は
 アルゼンチンの男にI LOVE YOUと言われた
 子供にFUCKと指を立てられた

 その男は
 テレビをほとんどみない
 ラジオも聴かない

 その男は
 ミーハーだ
 イエモンがお気に入りだ

 その男は
 よく口で失敗する
 おしゃべりだ

 その男は
 生きることが仕事だと思っている
 人には迷惑をかけないようにしている

 その男は
 鏡に映る自分を見ると
 寂しそうだと独りごちする

 その男は…
 その男は…
 その男は…


 

 
 

 
 
 


自由詩 その男は Copyright 山崎 風雅 2006-05-07 18:09:46
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