耳をすませば
砦希(ユキ)


寂しさに身を任せて
誰かの肩にもたれるのはもうやめよう
頬に触れた肩のぬくもりは
いつかは褪めてしまうし
褪めてしまえば
残るのは寂しさだけだし

アルコールと煙草のけむりが
体内で混じる
少しだけ心地よくて
だけどやっぱり
吐き気は消せない
いっそすべて
吐き出してしまえたらいいのに


耳をすまして
風のおとを聴こう
どちらから流れてきて
どこへ行くのかを感じられたら
わたしもそこへ歩いていくよ


寂しいからと自分に言い聞かせて
ひとり
夜の街に出かける
ああ、ねえこの街は
なんでも手に入ってしまうよ
あんなに欲しがっていた
だれかのぬくもりさえも

ぬくもりはいつか冷めて
つめたい夜がわたしを包む
そのつめたささえ
わたしはこんなに欲しているのか


耳をすませば
だれかの泣き声がきこえてくる
わたしまで
泣きたくなってしまうから
耳なんて塞いだままでいいの
喧騒に満ちたこの街が
わたしには似合っている


 


自由詩 耳をすませば Copyright 砦希(ユキ) 2006-05-06 20:38:29
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