まつりのあと
明日殻笑子

遠い昔
おさないときに
咲かせた一輪おぼえている
ブリキのジョウロ
みずのいれすぎで
西日がくらんで全部こぼした


花はあんまり鮮烈で
恍惚故に戦慄だった


こころは嘘をつかないというけれど
花の枯れたさまはおぼえていない

けれど

同じ季節が
匂いでわかるほどに
おおきな大人になったのだろう


もうどこにももどれないことを


ブリキのジョウロはさびついて
みずはすこしもたまらないから
せめて かわいた花びらはらはらと
涙の代わりにこころに落とした


西日だけがずっとまぶしい


自由詩 まつりのあと Copyright 明日殻笑子 2006-05-06 13:58:42
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