まちぼうけ
ポロリ

静かな絶望の風が
こいつらの体にも
纏わっているのだろうか

二十分ほど
この黒の儚げな線を
真っ白のベンチに腰掛けて
眺めている

自分より重い荷物を
えっちらおっちら担いで歩き
いつまでも同じところを
ぐるぐるまわる

遠くで名前が呼ばれた気がした
立ち上がり後ろを振り向く
彼女が手を振って
息を切らせて駆けてくる

目の前に立った彼女は
真っ黒なキャスケットをかぶり
真っ白な八重歯をのぞかせている
胸元にはプレゼントした十字架が輝いている
まるで胸に墓が突き立っているようだ

ふいに母が親戚の爺さんが死んだ際に
「〜さん、フクジョウシを知っていて?」
と、おもむろに聴いたことを思い出した
「ああ」と答えて
本から目をそらさなかったのだった

薄く思い出し笑いをすると
彼女は「位置が悪いと思ってるでしょ」
と十字架を片手でつまんだ
黒のコートから
水色のキャミソールのフリフリが
顔を出している
心臓の鼓動が速まった

下着がショッキングピンクか
それとも黄緑だったなら
うまくやっていける気がする

そういえば
もう何度も
そう思わせられている

見ると
蟻も
別な蟻に
ちょっと小ぶりな餌を
手渡していた


自由詩 まちぼうけ Copyright ポロリ 2004-02-12 23:27:04
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