学校
アンテ


おはよう
クラスメイトのヒロコちゃんが
すこしだけ立ち止まってから
手をふって駆けていく
角をまがって見えなくなる

太陽に傘がかぶっているから
もうすぐ雨だ
ランドセルのなかみを確かめる
これだけたくさん持ってきたから
きっと
みんなに行きわたるだろう

教科書もノートも
入らなくなったけれど

朝はとくに影が重くて
一生けんめい歩いても
すこしずつしか前に進めない
汗がぽたぽた落ちる
学校まで あとどれくらいだろう
おくれないようにねって
先生に言われたから
今日の朝は
二時間もはやく家を出たのに

鳥がエサをさがして飛んでいる
風がふくたび
たんぽぽの種が飛んでくる
コンクリートのうえに降りたって
生えることはできないから
ひろって道ばたの土手に埋める

影がひとごとみたいに
さぼっちゃえばと言う
へとへとになったので
すこしだけ休憩して
水筒のお茶を飲む
影にも分けてあげると
あっという間に空っぽになってしまう
服が汗でべとべとで
気持ちがわるい

叱られるのはイヤだ
みんながしゃべってくれなくなるから
いちど ヒロコちゃんまで
いっしょに遅刻してしまって
先生に叱られた
ヒロコちゃんはわるくなかったのに

影を引きずって出発する
雲がどこからかやってきて
空をかたっぱしから埋めていく
とうとう太陽がかくれてしまったので
影がかるくなる
ぼたっと
時々かたまりが落ちてきて
それはドロドロの靴だったり
死んだ猫だったり
車のタイヤだったりする
当たらないよう
上を見ながら歩いていると
土手から転げおちそうになる

むこうの方にやっと学校が見える
雨が降りだしたので
傘をさす
先生がびしょぬれになって走ってきて
わたしの手をつかむ
風邪をひかないように
ランドセルから傘を出して先生にかしてあげる
やっぱり持ってきてよかった
ときどき物がおちてくるから
手をひっぱって
よけさせてあげないといけない

はやく学校へ行かなくちゃ
みんなに傘をくばらないと
教科書がぬれてしまう
教室じゅう雨もりしているから

先生はとても怒っている
きっと傘をわすれたのがくやしいんだろう
雨の日は気持ちがいい
体がとてもかるいから
みんなに傘をくばってあげられるから
スキップして歩く


自由詩 学校 Copyright アンテ 2003-04-11 01:27:10
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