あなたはいつも少しかなしい
たちばなまこと


あなたはいつも少しかなしい
春の肌の女の子 薄桃色の乳首のように
きれい
「あなたはいつも少しかなしい」
ハッカのにおい
耳たぶをふるわせた「かなしい」を思い出して
まるくなる
私は冬になる


ちっちゃい手
ちっちゃい肩
それはいつも少しかなしい
ビーンズのきみは回転する
足の付け根が遠く 痛くなる
きみはまだ泣かない
きみは回転する
からだの中の水で
甘いときみはいっぱい飲むし
私ときみは順繰り廻る
それはきっと少しかなしい


「かなしい」をふるわせた人が
少しかなしい私ときみを包んで
「かなしくならないで」をそそぐ
頭皮がひらく 生きもののあたたかさで
ビーンズのきみは手足をばたつかせて
からだの中の水とあそぶ
きみはまだ泣かない
それは少しかなしい
春の色はきれい
きみはまだ薄桃色
甘い水をうんと飲みながら
夏を待っている




自由詩 あなたはいつも少しかなしい Copyright たちばなまこと 2006-05-02 10:53:02
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