午後と鈴
木立 悟




森のはざまの道に無数の
人のかたちの木漏れ日がいて
静かに立ちあがり招くとき
空はすべて木々になり
道は奥へ奥へとつづく


石の階段に灯りは無く
糸の光がゆらめいている
いつしか道は前だけになり
音もにおいも風さえも
濡れた緑になってゆく


置き去りにされた導きが
蜘蛛の巣に幾つか揺れている
草は石を後ろから抱き
暗がりはゆるやかに波打ちながら
導きを鈴に変えてゆく


重なる鳥居の行きつく先の
わからないかたちの岩の陰から
金色の尾が見えていて
数えるまもなく消えてゆき
風をひとつ裏がえす


灰が灰を呼ぶ心
小さな鈍は知っていて
雨が葉の空をひらくころ
笑みはたしたしと階段をおり
鈴を緑に実らせてゆく











自由詩 午後と鈴 Copyright 木立 悟 2006-04-27 15:52:54
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