るーぷする。
夕凪ここあ

夜が訪れたことに気づかないでいたら
いつが夜明けなのかわからなくなってしまった
区別がつかない 月は
欠けているのか 満ちていくのか
私の呼吸と 似ていた



お話と呼ばれるものはいつだって
甘く、一瞬で溶けてしまう幻想の
金平糖と同じ形をしていたあの日
お母さん、眠れない夜にはいつも
遠くの方で淡く光っていたそれを
私にはまるで手の届かないそれを
一粒拾ってきては聞かせてくれた
お母さん、私はそれから夜、には
月の満ち欠けを間違えることなく
眠りの奥深くに閉まっておいて、
ひつじのかわりにしていました。


窓を開けても匂いは見当たらない
すっと風が 私を拭って行っても それは
さっき私が吐いたただの呼吸音
手放したものは結局もとに戻る
夜が私の体に還ってしまうせいで一向に、

あぁ、指先を伸ばしてみても
爪を噛む癖がいつまでもなおらない私の短い爪の先は
夢、という文字の在処にすら届かない

欠けてしまった月を見て
 兎はどこに消えてしまったの
と聞かれても満ち欠けの正しい読み方も知らない私は
もう、兎の居場所を答えることが出来る
簡単に



自由詩 るーぷする。 Copyright 夕凪ここあ 2006-04-26 01:04:41
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