やりきれない
水在らあらあ

 


 青みがかる灰色の空
 春の若葉も静かな会話
 横断歩道 赤に変わって
 僕は止まる 息を吐いて

 思うことはたくさんあるが
 思っても仕方のないことばかりで
 晩御飯のこととかを
 考えてみたほうがまだ
 やりきれない気持になったりしない

 やりきれない気持のままスーパーに行って
 やりきれない顔したサイのラベルのジンと
 やりきれない方向にねじれたピクルスを買って
 それじゃあきっとあいつがやりきれないだらうから
 やりきれないくらい甘いドーナツも買って
 これは円なのだらうかそれとも穴のあいた丸なのだらうか
 そんなことも やりきれずに

 
 やりきれない気持は呼吸とともにもれて
 やりきれない気持でいっぱいになった部屋の窓を開けて
 昨晩の雨で水たまりができているテラスに出て
 ずぶぬれになったサボテンの鉢を
 やりきれない気持で拭いて

 向こうの通りで鳩追っかけてる子供達を見て
 信号無視するおじいさんを見て
 立ち止まっておしゃべりしている家族を見て
 匂いをかぎあう犬達を見て

 あんなふうに匂いをかいでみたい女の子なんか
 おまえの外にもたくさんいるわ
 
 だけどそれもどうせやりきれないのだらうから
 やりきれないジンにやりきれないピクルスを入れて
 トマト缶で割って 飲みほして 
 やりきれない気持で否定してみる

 
       ―――――光がないから反射しないから
            キラキラでもしてくれればいいのに
            思うことはたくさんあるが
            思っても仕方のないことばかりで
            キラキラでもしてくれればいいのに
            光がないから反射しないから

  
 思うことはたくさんあるが
 思っても仕方のないことばかりで
 おまえが帰ってきたら
 目を閉じて
 おまえの匂いをかごう
 なにも思わずに
 






自由詩 やりきれない Copyright 水在らあらあ 2006-04-24 17:26:13
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