ホムンクルスの王
鏡文字

そこにひとつの「o」が
存在する時
輝く不在が
痛みとなって主張し始める
通過されない「o」と
見えないものを要約し続ける「o」とが
朽ち果てた「o」を媒介に
あらゆる内容を形成する

「o」が生まれたとき
彼の新しい右耳は
エロスという名前と出会った
太陽は「o」の真上にあり
周囲の影を吹き払った
同様に
「e」は失われ
「o」の減少が始まった

「o」が消滅しかかったその時
彼の待っていた獣が
塔から出てくる
月光を浴びて蒼白いその背に
打ち跨っていたものは
無用の「a」であり
もうひとつの「o」である

火炎の夜
彼と共に
我々も喜びのダンスをしよう!
ここに奇蹟が体現されたのだ
それは全ての現象に似て
何にも似てはいない

じきに彼は
王にふさわしい盃を手に入れる
そこに映りこむものは
おそらく
「i」海を超える語り手
もしくは
結合の「u」であろう

完成された「o」は
近い将来
彼を豊かにする
我々は彼の姿を見て
いずれは我々自身の「o」を
造形するだろう
その日まで我々は決して
背退せずにいることだ
変革の「o」は既に我々の魂の内に
表れはじめているのだから


自由詩 ホムンクルスの王 Copyright 鏡文字 2006-04-23 07:08:28
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