バイバイ
松本 卓也

夜が静かに震えて
雨が残した雫の音を
途切れ途切れに数えていた

置いてきたものとか
残してきたものとか
そんなに遠くではないけど
もう帰れない日常を思い

少しだけ寂しくて
無意識に呟いた言葉
その意味を振り返る

別れを告げる事もできず
立ち去った道の向こうには
今でも笑顔が咲いている

そう信じていないと
市役所前の歩道橋で
君と似た人を見つけようと
立ち止まってしまうから

僕らは生き様の交差点で
偶然信号で立ち止まるように
出会い そして別れただけ

でも きっと忘れないから
繰り返すたびに虚しくても
ずっと忘れないから
何度でも呟いてみせるよ

互いの傷を舐めあって
苛む不安に抗うだけの
関係だったとしても

僕らの間にあったものが
真実と呼べるものだったと
振り返る明日があるのだから

それじゃお元気で
バイバイ


自由詩 バイバイ Copyright 松本 卓也 2006-04-23 01:05:46
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