春の吐息
紫翠

ゆらゆらかげろう 
玻璃の向こうに 
柔らかき草萌ゆる 
丘、ありて 
音もなく 風渡る 景色に 
あきもせず 
遥かお山はぼんやりと 薄蒼く 
頬杖つく 
椅子の背は 
しっとりとして円い

たとえようもなく 潤い満ちた 春にありて
ひとり 秋のうたくちずさめば
橙に染まる木々の匂い
静まりゆく いのちの遠き声
ふれる陽に 結晶し 昇華し
やがて消えゆく 
その秋の 

軌跡をなぞる 
わたくしの仄かな体温



自由詩 春の吐息 Copyright 紫翠 2006-04-22 02:07:16
notebook Home 戻る