10までを数えて
霜天

いつもほんの少しを数えたくて
それは真っ直ぐに見えない夜のために
道に帰れないその日のために
僕が、ほんの少しを数えたくて
出来るなら、そんな僕のことを
少しでも待っていてほしい、とか



1、と数えて
これから僕が始まっていく
帰りたいとは思わない
はずだった
積まれていく昨日と
今日という今日のために



遠くの街で、空が揺れて
人たちが揺れていたらしい
それはほんの気紛れかもしれないし
積み上がった僕らのせいかもしれない
けれど
知らないこと、そんなふうにして
ブルースクリーン
今朝もその向こうで世界は元気らしいから
ランダムにおはようと繰り返している
そんな姿を



1から始まって、きっと帰っていけるから
10まで、ほんの少しだけ
数えておいてくれないか
きっともうすぐで、僕の物語だ



嘘をつかない、ことについて
僕らはもう傷だらけになってしまう
どこまで武装していけばいいだろう
包帯も切れて
戻るための靴底もない
スカイブルー、それがよかった
余計にならない傾きで残っているベンチで
いつもその先に座って



数え終えてくれたなら
ほんの少しだけ聞いてほしい
きみの街がもう夜ならば
閉じている目の隙間からでも
きっともう僕らは見えない
その方がいい、のかもしれない
夜という夜のために
夜がある世界のために
零れていった誰かのことを
忘れてしまった空が揺れて
それは気紛れとも
僕らのせい、とも


1から語ってみたとして
後には何が残るだろう
眠れない夜にほんの少しを
10までをそっと、数えたくて


自由詩 10までを数えて Copyright 霜天 2006-04-22 01:59:49
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