喪春
A道化



風が、終わり
雨が、終わったときに
はら、と
静かなる宙を濡らす、桜の
一枚
また、一枚、の
美しい震えの方法を
耳打ちされたおんなが
ふと、拭えば
桜で濡れた指先


震えることならば
ひとりでも足りるが
はらはら、はらはら
地を濡らした雨を
桜が更に濡らしてゆくように
桜を濡らした雨を
桜が更に濡らしてゆくように
慈しみ合うことはひとりでは
ああ
ひとりでは


痛い、
痛い、
はら…、
はらはら…、
春…、それだけで
ひとりでに
或る春の不在が露わです



2006.4.21


自由詩 喪春 Copyright A道化 2006-04-21 02:58:27
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