酔い覚め(サラリーマン諸君!)
ZUZU
ああ素朴な人に会いたいのだ
こんな
読めない漢字のように
むずかしすぎる人々にもまれて
どこでなんの役に立っているのかわからないような
仕事をしている
サラリーマンの僕ならば
階段ののぼりおりさえ
まるで迷路のように渦巻くのだ
洋式トイレをトイレットペーパーでふいてから
用を足すわけでもないのに
ズボンをはいたままためいきをつくのだ
意地悪な部下に嫌われるのは
それほどこたえない
僕などをいじめて何がおもしろいのかわからない
おんなというのは不可解だ
とにかくあの女の入れてくれたお茶は絶対飲まない
友達ってなんだろう
仕事をしていては友達なんかできないな
学生のうちにつくっておくべきだったのだ
だけど友達はもういない
おじいちゃんももういない
おばあちゃんももういない
あんなに可愛がってくれたのにな
真っ暗な部屋のなかに帰っていくと
鍵さえかけていなかったことに気がつく
無防備なら何もかも盗まれるような
そんな無用心で
そんな臆病で
でもほんとうは
だれも僕の大事なものが何かなんて
わかっていやしないのだ
あああの娘に会いたい
でも会ったらきっとがっかりするだろう
あの娘はそういう気性だから
だから会いたいのに会わないのがちょうどいい
きっとあの娘もそうおもっているのだろう
買って来たカツどんがとてもまずい
酒なんか飲んでもなんの役にも立たない
今日の新聞にもそう書いてあった
だけどああ
素朴な人に会いたいのだ
そして素朴な話をしたいとおもう
うまくは言えないけれど
うまくは言えないようなちょっといい話をするんだ
ちょっと泣いて
それでまた
起きたら一日がはじまる
操縦桿をにぎるロボットのパイロットのように
自分を動かしては出勤するのだ