彼の指が私の内臓にくっきりと跡をつける

月が満ちた夜、私の身体、ひとつひとつの動作の継ぎ目や隙間から、生暖かい性感が分泌物のように滲み出ている。
私自身そのことに気がつかないにしても、やがては溶岩のような暗い輝きを持ったひとつひとつの細胞の集積が、私を突き動かすときがくる。
世に溢れる感覚を刺激し、突き動かしてゆくものすべてに私は自己を崩壊させる。
あなたがいなくなって、あたしは咲いていく
遠くで月が夜に泣く、分泌物は彼の頬を濡らしたのかもしれない。
すごく、いみがわからないひかりが、
この世の見えないもののとともに右の鼓膜を鳴らすのだ。
定めだと認めてしまうのなら、すきとおるしろいかぜ。
ながれていく。なつかしいひび、あなたと歩いた砂浜。
青紫の痣が私の上唇を痙攣させて止まない。
ゆっくりとしなやかに、月に私は唱える。
満ちるるものの美しさに、昂揚を隠し切れずに。



自由詩 彼の指が私の内臓にくっきりと跡をつける Copyright  2006-04-15 02:22:03
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