カオリン・タウミに捧ぐ
服部 剛

その破天荒な男は 
ある晩、僕等の目の前に現れた 

目に映るあらゆるものに逆らい
虚空に拳を殴りつけ 
いつも目に見えない何者かの影に怯えながら
心の弱さと戦う彼は 
一体何を求めていたのだろう 

土曜の夜の場末のBarで 
マイクを手にした
彼の口が羅列する機関銃の言葉 
誰の手も届かない心のふところに 
疾風は吹き抜け 
月夜の狼となり吠える声に 
深夜の酔いどれ達はふり向いた 

一瞬の静寂しじまの後に 
彼は何度も呟いた 

 ( I gotta I gotta I gotta・・・ ) 

 ( アイガ アッタ・・・ ) 

寂しがり屋のクラクションを鳴らしては 
誰かのリアクションを求めた彼は 
窮屈な呼吸を繰り返す 
日々の束縛から解き放たれて 
一瞬の光を残して流星の如く 
夜空に消えた 

ロッカーズの星になった彼は
今も夜空の何処かで
笑っているだろう

一人の女と幼い子供を残して
旅立った夜空の向こうで 
安らかなれ 詩人の魂よ 

地上に残された僕等は
月夜の狼となり 
寂しさに人のぬくもりを探しながら 
詩い続けてゆく

彼が残した流星の残像 
光の滲にじむ傷口 
今も時々胸にうずくだろう 

夜空に瞬く詩人の魂よ 
不器用に生きながらつむぐ言葉で 
Howlingする僕等の日々を 
見守っておくれ 

今夜はグラスを片手に 
夭逝ようせいした詩人が遺した 
激しい日々の軌跡を讃えよう 


吹きつける風に消えまいと 

たった一人

いつまでも夜空に瞬く

あのロッカーズ星を 



   * この詩は2000年に亡くなった
    詩人 Muddy Stone Axel への追悼詩です。
    ( Kaddish ・・・聖歌 )

   * ロッカーズの星 はMuddy Stone Axelの
     詩から引用しました。






自由詩 カオリン・タウミに捧ぐ Copyright 服部 剛 2006-04-15 01:24:41
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