ストリッパー (2)
ベンジャミン
夜のネオンきらびやかな街の一画
あのストリップ劇場で出会った君に
僕はもう一度会いたかった
七色のミラーボールの下で
ピンクのランジェリーは様々に色を変え
君の肌もそんなように輝いていて
三万円で君を抱けると言われて
別の部屋に案内された僕に
君はそれ以上に眩しかったんだよ
「あの・・・ 俺、そういうんじゃなくて
あの・・・ 俺、淋しかっただげだがら」
だから
僕はまた三万円を握りしめて、あの
ストリップ劇場に行ったんだ
客引きの兄ちゃんに引っ張られて入った
そこにもう
君は居なかったんだよね
がっかりしてそのまま帰ろうとした僕を
何故か客引きの兄ちゃんは激怒して殴ったよ
店の裏通路で
折れた奥歯が喉につまって僕は
自分が吐き出したものにまみれていたよ
君を探して
君はたくさんの名前を持っていたから
僕は一つ一つ思い出しながら歩いたんだ
君はストリッパーで
君は服を脱いでお金をもらうから
僕の手に握られた三万円はくしゃくしゃになってた
雨が
降っていたよ
君はたくさんの名前を持っていたけど
君はもしかしたら「みさき」っていうんじゃないかって
君は返事をしてくれなかったけど
君はそのまま消えてしまったけど
海の見える場所へ
僕はいつの間にかたどりついた岬で
やっと君を見つけた
服を着たままの君を
僕は言葉も忘れてかけよって
僕は何のために探していたのかも忘れて
服を着たままの君を
僕は
「あの・・・ 俺、良くわがんねぇけどお
あの・・・ 俺、
もう一度ありがとって言いたかったよお」
服を着たままの君は
「あたしね・・・ もう、捨てるものがないの
脱ぎ捨てるものはもう全部脱ぎ捨ててきたし
あの日、あなたの前で
あたしを抱かなかった、あなたの前で
あたしはもう何も捨てるものがないんだって」
岬の突端に立つ君と僕
君は僕を突き放してぎりぎりの端に立って
泣いた
「あたしね・・・
ごめんなさい・・・ ごめんなさい・・・
あたしもう、自分の名前なんて覚えてないよ
忘れてしまいたいことと、忘れられないことが
忘れてしまうことと同じだったら良かったのに
あたしはただ、逃げ回ることしかできなかった
だからもう、全部終わりにしたくなっちゃって」
体を海の方へ傾けてゆく君を
僕はからだいっぱいの力で抱きしめながら
「あの・・・ 俺、良くわがんねぇけど
あの・・・ もう
もう・・・ いいがら
いいがらさあ
君の名前なんて、俺は知らなぐていいし
君の名前が、君だなんておもってないし
だって君はさあ
君はさあ
あの日の、僕だがらさあ・・・」
(淋しかったんだよお・・・)
(もう、いいがら)
(もう、いいがらさあ)
居てくれるだけで
(いいがら・・・)