雨に素粒子
a.u.i.

八時、駅に
  そういえば昨日はずいぶん言葉を素粒子に引き渡したな、
そう思った後、紛れてゆく私の煙
冷蔵庫の開く重低音
ただいま、


ソーリー、と軽やかにマルキューを見上げる外人さんをかわし
歩道よりも車道へ
  じゃぁ、この一段を降りたら タイムスリップしたいよ
トンッ
前に出してみる右足
あぁ タクシーってみんな血の気の多い目をしてるんだね
殺気立ったオームみたいにして列を成してる
  じゃぁ、あの扉を、この扉を 開けたらラピュタへ行けるの?
みんな運転手に言う
  『ラピュタまで、』








ラピュタまで。


板ばさみの人間に、今日の下弦の月は似合わない
  立ってるだけだからいいよね
  自分が物みたいなときに、疑問を持たずに済むものね、
  ”サンドイッチみたい”
(無邪気に言えただろうか。
もう一度
   サンドイッチ、みたい、
       ?
       ?
       ?
       ?
       ?
  『泣けていいね、』
とあなたの笑み
笑わないで、


このグラス一杯の、
いっぱいの、
カシス
落ちると決めたのはたしか17
空いっぱい カシスの実だけを投じた夕方でした。
追伸:お元気ですか?
私はレモンを潰しています、此処で


雨に素粒子を見た
なぜか悲しくなりたくて
傘の柄におでこをあてる
  眠りにつきたい、
3.141.........
愛と同情は天秤にはかけられない
  もうそういうの、したくないな
私がしなくなったら成り立たない人たちがいて
その人らは多分泣くだろう
悲しみは天秤では量れないよ?と言ったら
今度はみんな泣くだろう、
.....592.............
言いたいことなんてすでにない


私が物になるそのとき。
何も憎くはない
  『八時、駅に、』
開かれた冷蔵庫、重低音
そんな音して泣かないで、
ただいま


自由詩 雨に素粒子 Copyright a.u.i. 2006-04-12 03:44:20
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