閉じた夏の日
夕凪ここあ

空が、
ゆっくりあの日の
色を取り戻す

あれはオレンジと呼ぶには淡い
橙と名づけた空を
描きとめたスケッチブックはもう
色褪せて

何度もアスファルトの先に
思い出を見ようとして
その影さえ踏めない

平行線を引いても
辿った先でいつも交わってしまう
今は何とも繋がらない

知らなければ
消えることすらなかったのに

ちりん、ちりんと夏の音がする
夜を迎えるあの虫の名前が思い出せない

橙は色褪せて
ゆっくりゆっくり
私はそれ以上の速さで
通り過ぎてしまった

ちりん、ちりん、と夏の音が、
私たちはあの日置いてきてしまった

陽炎の中 見えない


自由詩 閉じた夏の日 Copyright 夕凪ここあ 2006-04-10 14:08:48
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