藍色の少女と
夕凪ここあ

藍色の少女は密かに夜の匂いを纏って
透き通った肌からは昨日が覗いていた
音もなく窓辺に降り立つと
そっと私の手に触れる ひんやりと
夜が私の体の芯に入り込む

裸足の爪先からは 夜が
生まれて果てしなく
まだ生まれたばかりのそれは
悲しみのせいか薄く消えそうな
それでいて決して消えないほどの

あれは月のない晩ひとりきりで見た夢のような

私は眠りによく似た心地良さに
手を伸ばす 瞬く間に私の昨日たちが
藍色に染まり透き通っていく
もう帰れないことを知った日

一枚一枚零れるように服を脱ぎ捨て
かわりに纏うのは少女の

手摺りに触れるとほんの少しあたたかい
もう私は少女の温度になってしまった
終わりの頃に涙が零れたが
夜と紛れて誰も知らない

私なのか夜なのかわからなかった
昨日や明日や夜明けと交差したはずだったのに
時間は存在しない私はもう
夜のまどろみに溶けて

藍色の少女と


自由詩 藍色の少女と Copyright 夕凪ここあ 2006-04-06 23:07:40
notebook Home 戻る