あなたのなまえ
まきび

同窓会の案内状を書いていて
あなたのはがきで手を止めた

あなたとは
卒業してから少し後
雨上がりの路上であった
それっきり

好きだとか
嫌いだとか答えずに
フランクなさよならすら言わないまま
あなたとわたしは別れた

その後も
無理に自分を納得させなければならないほど
あなたのことを思い出しもせず
友人との恋愛話に引き出したとき
時折感じる静かな罪悪感を
望郷の四柱の一本に
人に見つからないように
くくりつけながらやってきた

私はいつの日だか
カップ一杯のコーヒーを手渡すためだけに
誰かのそばに居たいと思った
けれどどうして
愛してくれるという
あなたのそばにはいられない

愛は複雑
愛の動機は曖昧

もしあなたが同窓会に来ることがあれば
あなたにはすでに恋人がいて
私と会ったときには
男ではなく接して欲しい

そんなことを思いながら
人間 すくなくともわたしは
自分と愛を分かてない人間には
恐ろしく非情なのだと
ああ たまに自分が嫌に成る
けれどもどうすることもできずに
あなたへの寂しい愛の答えをいたまま
はがきに「来てね」と一言添える

そこに懐古の情などないことを
とうに知っていながら



自由詩 あなたのなまえ Copyright まきび 2006-04-04 18:27:00
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