【短歌祭参加作品】ナナナナ
たたたろろろろ
便箋の字面に溶けた君の息 獣のかおり 熱っぽくって
和尚の目に浮世のひかり瞬く夜ナナナナナーナおれは彼女を
黒猫は媚薬を舐めてしなやかにふたりと海を飛び越えてゆく
「こんな事してあれだけど、この件は誰にも言うな。ピーちゃんにもだ」
真夜中に血の吹く映画を観てディナー「トマトサラダにはモッツァレラよね」
無意味のその言葉の意味も消えるほど夜がしろくて朝もまたしろ
「この本は?このビデオとか何なのよ!」「君のほうこそこそこそ何を?」
永遠に解けない魔法の味がした君の手首の傷なめた春
「パパとママ、分量や配分まちがえた?だってあんたこれ溢れすぎだし!」
ひかり 朝 愛液漬けのふたり
朝 マシュマロ製のベッド とろ け て