東京
砦希(ユキ)

東京
憧れていた街
過ぎてゆく人たちと
消えない夜の明かり

言葉を殺しながら
信号が変わるまでに
どうにかしてこの横断歩道を
渡らなくてはいけない
あ、またひとり
大切な人とすれ違った

憧れていた孤独
おしゃべりな私は
静寂に飢えていた

だからこの街に来たの

高層ビルの隙間を
縫うように走るタクシーは
誰か一人を降ろすたびに
すこしずつ
重くなる

「忘れ物にご注意ください」



東京
憧れていた街
過ぎてゆく人たちが
あ、またほら
私を振り返る


自由詩 東京 Copyright 砦希(ユキ) 2006-03-20 21:36:52
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