雨と歩み
木立 悟





雨は雨から何も得ず
雨をふたたびくりかえす
歩みは歩みから何も得ず
雨をひとり歩みゆく
あたたかさ冷たさをくりかえす
愚かさを 愚かさをくりかえす


雨のなかを追いかけ
追いかけられていた
砂でできた大きな木
はらはらとはらはらと微笑んで
乱れた軌跡に降る光
足跡の光をときほぐした


何かを踏まなければ
たどりつけないことばかり
波を踏み 花を踏み
通りすぎたことを知り
もう戻れずに
踏みつけられた言葉の前で
ただ立ちつくすことばかり


雨がひらき 閉じる間に
言葉は幾度も焼け落ちて
ふりかえることのない
一度きりの海鳥が過ぎ
砂のにおいを追いつづけ
朝を 夜を越えつづけた


雨は止み
雨の光の道が残され
砂のうた 砂の手のひらに
焼けた言葉の声はまたたき
にじむ道をゆく輪となって
歩むものへと打ち寄せる











自由詩 雨と歩み Copyright 木立 悟 2006-03-19 17:58:26
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